染と織地域別辞典

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加賀友禅(かがゆうぜん)

産 地

石川県金沢市

特 徴

加賀(金沢)地方で染められる糊置き防染法による文様染。手描染と型染があるが、加賀友禅とはおもに手描染のことをいう。
色彩は多彩。藍、えんじ、黄土、紫、墨の五彩を基本に配色する。色のぼかしは、模様の外側から内側へのぼかし(京友禅はその逆)が多く使われている。
また、木の葉に虫の食った跡を描く「虫食い」に象徴されるように、模様は絵画的である。なお、加賀友禅の模様は京友禅の模様から図案化された。
刺繍、箔置きなどはあまり行わない。

用 途

夏の着尺地。

変 遷

加賀地方に古くから伝わった染技法に、麻布に梅しぶで染める梅染、赤梅染、黒染という無地染があった。
寛文年間(一六六一~一六七三)に金沢藩の奨励により、これらの手法が加賀絹という絹羽二重に応用され「加賀お国染」と呼ばれる模様染が出現した。当時は防染剤として一陳糊(小麦粉を煮て、糖、消石灰、布海苔液を加えて練ったもの)が用いられていた。模様の糊置きは、この一陳糊を箸や楊枝につけ、糸状に垂れ下がる糊を巧みに操って糊置きをし、彩色後に糊をかき落とすという方法がとられていた。やがて、筒引きによる糊置きや絵模様を描き染める方法が考案されて色絵と呼ばれるようになった。この色絵の技法を家紋に用いたのが色絵紋(加賀紋)である。
享保三(一七一八)年頃、京都の絵師・宮崎友禅齋が金沢に移住し、加賀染に友禅図案を導入したことで、新しい模様染が完成したという。
(注*宮崎友禅齋の生没年は不詳。京都で活躍したのが一六八一~一七〇三年頃であるから、その後加賀に移住したことは十分に考えられる)。なお、加賀友禅と呼ばれるようになったのは、明治以降である。

加賀友禅(かがゆうぜん)画像01 加賀友禅(かがゆうぜん)画像02

染色法

染色の工程は京友禅と同じで、次の通り。
*白生地仮仕立て→下絵描き→糊置き→色挿し→蒸し→糊伏せ→地染→蒸し→水洗い→仕上げ。
●花嫁暖簾
花嫁暖簾は加賀友禅の源流ともいわれるものである。松竹梅や鶴亀などのめでたい柄を手描で染め、婚礼用などに用いられる。
なお、出雲地方に見られる暖簾や風呂敷は筒描である。